地表面温度は地球環境を扱う様々な研究において最も重要なパラメータの1つであり、熱赤外リモートセンシングは地表面温度の広域モニタリングのための有効な手段である。熱赤外リモートセンシングデータには大気の影響が含まれるため、これを除去する必要があるが、従来の処理法では様々な外部観測データを必要とすることが大きな問題であった。そこで本研究では、熱赤外リモートセンシングデータから外部観測データを使わずに大気・地表の各パラメータを高精度に同時推定する手法を開発し、その有効性の検討を行った。 最初に、理論的考察及びシミュレーション解析に基づいて、大気・地表パラメータの同時推定手法を開発した。この手法は画像内に含まれる複数の灰色画素(放射率の波長変化が小さく、1に近い物質が占める画素)を利用して大気補正パラメータを推定し、続いて大気補正処理及び温度・放射率分離処理を施す手法である。NASA/JPL開発の航空機搭載型熱赤外多バンドセンサTIMSの観測データを用いた検証の結果、本提案手法の有効性が示された。本成果については、国際会議にて発表し(1996年11月)、また雑誌論文1編(印刷中)にまとめられている。 次に、気象衛星NOAAシリーズ搭載のAVHRRの観測データへの適用性を検証するため、霞ヶ浦をテストサイトとして衛星同期フィールド実験を行った(1997年1月)。これは衛星通過時に霞ヶ浦の湖上にて放射温度計により水面温度を観測し、衛星データに提案手法を適用して推定される値と比較するものである。測定方法や気象条件などに若干の問題があったが、本実験は提案手法の有効性を裏付けるものであった。本成果については現在取りまとめの段階にある。 今後は提案手法のより詳細な精度評価を行う予定である。
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