研究概要 |
研究課題1 広域大気輸送シミュレーションモデルの開発 3次元オイラー型大気輸送モデルに,硫黄化合物を対象としてガスから粒子への転換,乾性沈着過程についての詳細なモデルを組み込んだ精密な数値シミュレーションモデルを開発し,感度解析によってメソスケール拡散場において各プロセスが及ぼす影響について検討した。この結果,大気安定度,混合層高さにより大気中酸性物質濃度,地表面沈着量は大きく変動し,大気が安定状態にあるほど大気中濃度が高くなることを示した。また二次生成粒子濃度は太陽光放射照度に大きく依存し,その転換速度は夏季の方が冬季に比べて約30%大きいこと,地表面沈着量は大気が不安定になるほど増加することなどを示した。またこのモデルを京阪神地域に適用し,冬季と夏季の代表日における大阪湾岸工業地域から内陸地域への酸性物質の輸送過程についてシミュレーションを行った。その結果,大気中ガス,粒子状酸性物質濃度は一般に冬季の方が高濃度の傾向を示し,また大気中酸性物質濃度,沈着量ともほぼ実測値と近い計算結果を示した。今後モデルのさらなる検証を行って,モデルの実用性を高めていく予定である。 研究課題2 降水による酸性物質の洗浄モデルの構築 降水による大気エアロゾル粒子の洗浄特性を検討するために,雨滴粒子の捕集理論に基づく洗浄モデルを構築し,大気,雨水中の元素,イオン成分別の洗浄特性を感度解析により検討した。その結果,降雨強度が大きいほど初期降水による洗浄効果が大きいこと,またその洗浄効果は粒径3μm以上の粗大粒子において顕著に現れることなどを示した。今後,この洗浄モデルを課題1の大気輸送モデルに取り込み高精度の酸性雨予測モデルへと発展させていく予定である。
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