本研究では、平成3年度までに圃場整備に伴い回収された水田水路において、植生を中心とした環境に一定の回復がみられたため、従前に生息していたミヤコタナゴ及び産卵母床であるマツカサガイを放流し、ミヤコタナゴの生息状況のモニタリングを中心に調査し、現況水路がミヤコタナゴの生息に耐えるかどうかを検討するとともに、今後の水路設計のあり方を探るための研究として実施した。 ミヤコタナゴは、平成8年6月7日に200個体を放流した。その結果、夏期には毎週数十個体のミヤコタナゴの仔魚の浮上がみられ、総計約1000個体に達したと推定された。親魚は、確認個体数が次第に減少し、9月以降は個体の確認はなかった。しかし現地で生産された稚魚、幼魚については、12月現在もすくないながら個体の確認ができ、産卵、孵化、成育について、現在の現地が一定の条件を整えていることが明らかになった。 現地の水路地形とミヤコタナゴ稚魚との関係については、ミヤコタナゴは水深の深い場所の水面付近で水の流れが弱い場所に多く確認され、水路設計の上では、単に左右の蛇行のような変化のある流路の提供にとどまらず、深くて淀んだ高低の変化のある地形が提供される必要があることが明らかになった。 これらの成果について、学会誌等に研究成果を報告すべく準備中である。
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