タンパク質合成はリボソーム上で進行し、リボソームはリボソームタンパク質とrRNAから構成されている。タンパク質合成の活性中心はリボソームタンパク質上に存在していると歴史的には考えられてきたが、現在ではタンパク質合成の活性中心はrRNA上に存在しているのではないかとの考えが支持されつつある。我々が開発したタンパク質合成系は、ピリジンをはじめとする芳香族三級アミンから構成される極めて単純化されたものであり、タンパク質合成活性中心を探査する場合、従来の複雑なタンパク質合成系を研究対象とするより、我々の系を用いるほうが得策である。そこで本研究では、リボソームをrRNAに置き換えたタンパク質合成系を、芳香族三級アミン存在下で構築することにより、タンパク質合成の活性中心はrRNA上に存在していることの証明を目的とした。 まず、試験管内転写によるrRNAの大量調製法を以下の手順により確立した。まず、rRNAをコードしている鋳型DNAを、大腸菌ゲノムDNAよりPCR法により増幅した。その際、プライマーにT7RNAポリメラ-セのプロモーターを連結しておいた。次に、鋳型DNAをpUCペクターに導入し、JM109株に形質転換して大量調製後、この鋳型DNAを用いて、T7RNAポリメラーゼによりrRNAを試験管内で大量に合成した。 次に、試験管内合成されたrRNAを用いて、ピリジン存在下生体外タンパク質合成系を構築した。この際、特に検討を要したのが、rRNAを活性な高次構造に折りたたむ条件の確立であった。このことは、適当な塩濃度溶液に対して、クル-ドなrRNAを透析することにより達成された。 さらに、23SrRNAは重合度2904の巨大な生体高分子であるが、活性に関与しているのはその一部であるとの仮説の基に、以下の手順でrRNAの機能部位を検討する実験的方法を確立した。(a)クロラムフェニコールなどの抗生物質を利用してrRNA上での活性部位を絞り込みを行っている。(b)翻訳因子等が存在しなくとも、tRNAをリボソームに直接結合することが可能である。この手法を用いて、rRNA上のtRNA結合位置を検討している。
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