研究概要 |
2原子酸素添加酵素の立体構造と反応機構の関連を明らかにするため、extradiol typeの2原子酸素添加酵素であるBphC酵素の立体構造を1.8Å分解能で決定し、結晶学的精密化をほぼ終了した。この立体構造の決定により、(1)活性部位の決定、(2)触媒残基の推定、(3)基質特異性に関与する残基の推定を行うことができた。解析には、活性中心の鉄が酸化された失活した酵素を用いたため、基質(2,3-dihydroxylbiphenyl及び3-.methylcatechol)との複合体の立体構造を決定することができた。そのため、上記の(1)、(2)、(3)をより確かなものとすることができた。 また活性部位の立体構造を詳しく観察することにより、基質と活性部位の形状に、非常に高い相補性があることを見出した。この高い相補性のため、基質(2,3-dihydroxybiphenyl)が活性中心の鉄イオンに配位結合した際に、非対称的な水酸基のイオン化が起こることが示唆された。Wild typeの解析に加え、約20種の変異体の構造を、基質のある場合、無い場合について、2.6Å分解能で決定した。これらの結果と、共同研究者(長岡技術科学大学 福田雅夫享受)らによるPphC酵素の変異体の生化学的データから、基質の結合には、疎水相互作用が重要であり、高い酵素活性のためには、基質と基質結合部位の形状に高い相補性が必要であることが明らかになった。 また、194番のHisは、酵素活性に必須であることを、明らかにした。この変異体の立体構造解析の結果を考え合わせると、この残基は、基質から水素を引き抜く役割を担っており、このプロセスが反応の進行に不可欠であることが示唆された。
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