研究概要 |
ヒト絨毛癌細胞株JEG-3が産生する胎盤型アルカリホスファターゼ(ALP)並びに絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)についてキカラスウリレクチン(TJA-I)を用いたレクチンカラムクロマトグラフィーを行った。TJA-IはSiaα2→6Galβ1→4GlcNAc残基を認識し、糖蛋白質分離に関する有用性は既に報告している。ALPは酵素活性測定、hCGはELISAによりその結合性を調べたところ、約30%が結合画分に回収された。一方、精製された正常ヒト尿中hCG及び胎盤性ALPについて同様にTJA-Iカラムクロマトグラフィーを行ったところ、結合する分子種は認められなかった。したがってJEG-3細胞におけるシアリルα2→6残基の異常産生が明確にされた。そこで、正常ヒト胎盤組織とJEG-3細胞からミクロソーム画分を調製し、N-アセチルラクトサミンを基質としてα2,3-シアリルトランスフェラーゼとα2,6-シアリルトランスフェラーゼの活性測定を行った。その結果、蛋白量当たりのα2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性が癌化に伴って約3倍に増加していることが判明した。したがって、シアリルα2→6残基出現の背景にα2,6-シアリルトランスフェラーゼ活性上昇が存在することが明らかになった。現在、両シアリルトランスフェラーゼのmRNA量をNorthern blot法を用いて調べるために、RT-PCR法によりプローブ作製が終了したところである。α2,6-シアリルトランスフェラーゼの転写調節機構を含めて癌化に伴うα2,6-シアリルトランスフェラーゼの発現機構を明らかにしていく予定である。
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