研究概要 |
本研究ではシャペロニンの作用機構と構造変化の相関の手がかりを得るために、好熱菌シャペロニンで観察されたダイナミックな構造変化(ATPの加水分解に伴って2層リングのシャペロニンが、その赤道面から2つに分割する現象)の意味を大腸菌のシャペロニンGroELを用いて解析することを目的とした。 その結果、次のようなことが明らかになった。 ・大腸菌のシャペロニンGroELと好熱菌Thermus thermophilusのシャペロニンをATPとK^+存在下で保温すると、両者のハイブリッド([T.cpn60]_7-[GroEL]_7など)が形成されることがわかった。この現象は,GroELにおいてもATP加水分解のサイクルの途上で一時的に2層リングの分割が起こっていることを示している。 ・さらに、陰イオン交換HPLCで精製したハイブリッドシャペロニンを用いることによって、陰イオン交換の形成の詳細なメカニズム、および、その生化学的な諸性質を調べた。ハイブリッドシャペロニンに、ATPやcpn10などを加えても、もとのT.cpnやGroEL_<14>は再び出現してこない。70℃で保温した場合や,ProteinaseKで処理してGroEL側のリングを変性,分解したときのみ、T.cpnが出現した。また、T.cpn60の遺伝子を大腸菌で発現させて得られた組み換えT.cpn60_<14>とGroEL_<14>をATPとK^+存在下で保温しても,両者のハイブリッド([T.cpn60]_7-[GroEL]_7)が形成された。このことから、ハイブリッドシャペロニンの形成には、T.cpn10は必要ないことがわかった。さらに、ハイブリッドシャペロニンはGroELと同程度のATP加水分解活性を持ち,また、試験管内での蛋白質の折れたたみ促進機能も有することがわかった。
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