研究概要 |
本研究では、ピルビン酸キナーゼ(PK)のアロステリック効果に重要なアミノ酸残基を同定するために、同一遺伝子からalternative splicingによって生成する性質の異なるふたつのPKアイソザイム、M2(アロステリック型)およびM1(非アロステリック型)の一次構造を比較し、サブユニット接触面にあるどのアミノ酸残基が重要な役割をもつのかを部位特異的変異法により検討した。 変異を導入した組換え酵素の発現にはバキュロウイルス昆虫細胞発現系を用いた。これによりラットピルビン酸キナーゼM1およびM2アイソザイムの組換え体酵素の大量発現系を確立できた。M1アイソザイムのサブユニット接触面にあるアミノ酸残基をM2のものに置換した酵素を発現、精製し、酵素学的な性質を調べたところ、Ala-398をM2型のArgに置換すると、基質であるphosphoenolpyruvateに対するHill定数が1(非アロステリック)から2.7へ大きく増加し、同時にKmが約8倍に増加することがわかった。さらに、この変異酵素はM2やLのようなnativeなアロステリック型アイソザイムと同様に、fructose-1,6-bisphosphateによって活性化され、サブユニット接触面の単一アミノ酸置換がhomotropicおよびheterotropicなアロステリック効果を引き起こすことがわかった。このようにサブユニット間の相互作用による各サブユニットの活性型および不活性型conformationの相互変換にサブユニット接触面のアミノ酸残基が重要な役割をもつことが示唆された。
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