カルシウム/カルモジュリン依存性蛋白質リン酸化酵素I(CaM kinase I)のその細胞内カルシウム情報伝達に果たす役割が注目されているが、その詳細は依然と明らかでない。 これまでのCaM kinase I研究を我々の成果を中心に要約する。 1.CaM kinase Iはラット脳の可溶性画分から精製された。 2.CaM kinase Iは単量体で存在し、分子内のその触媒、調節領域が同定された。 3.新たなCaM kinase(CaM kinase Kinase)が同定され、それはCaM kinase Iをリン酸化、活性化するものであった。 4.CaM kinase Iは胎仔後期、または生後間もない時期のラット脳に置く発現していた。一方、嗅球ではCaM kinase Iの一貫として高発現していた。 5.胎仔ラット脳から2つのCaM kinase IアイソフォームcDNAが単離され、それらは脳に特異的に発現していた。 以上の結果から我々は、CaM kinase Iが神経系における回路網の形成、シナプス伝達に関与する、と考えている。当研究課題は、CaM kinase Iの蛋白質基質を同定し、中枢神経の構造、機能におけるその蛋白質リン酸化の果たす役割を更に検討することであった。研究成果を以下に要約する。 1.選択的なカルモジュリン拮抗剤HMN-709を開発した。これはCaM kinase Iを阻害する分子プローブになり、CaM kinase Iの薬理学的な解析を可能とした。 2.更に、CaM kinase Iを直接に阻害するプロテインキナーゼ阻害剤も開発した(投稿準備中)。 3.既に、我々はCaM kinase Iの野性型、その調節領域を欠いて常に活性型にあるリコンビナントの構築に成功している(H.Yokokura et al(1995)J.B.C.)。 Cam kinase Iはラット脳の可溶性画分中で様々な蛋白質をいろいろな程度にリン酸化することを観察した。引き続き、カルモジュリン拮抗剤、プロテインキナーゼ阻害剤、そしてリコンビナントCaM kinase Iを用い、その蛋白質基質を一つずつ分離、同定して行きたい。
|