研究概要 |
ヒト血小板とブタ白血球の2種の12-リポキシゲナーゼのアイソザイムを、^<14>Cで標識したアラキドン酸の種々のヒドロペルオキシあるいはヒドロキシ誘導体と反応させ、酵素活性に与える影響と酵素蛋白に取り込まれる放射活性を、好気条件下と嫌気条件下で比較検討したところ、以下の知見を得た。 1)アラキドン酸との反応で,白血球型の酵素が12-ヒドロペルオキシン酸に加えてその約10分の1量の15-ヒドロペルオキシ酸を生成するのに対し、血小板の酵素は約100分の1量しか生成しなかった。 2)15-ヒドロペルオキシ酸の14,15-ロイコトリエンA4への代謝速度は、血小板の酵素では白血球型の酵素の約10分の1であった。 3)15-ヒドロペルオキシ酸の存在下で、白血球型の酵素はほぼ1分以内で約80%失活したが、血小板型の酵素は3分で約30%しか失活しなかった。 4)好気的条件下のみならず、嫌気的にも、15-ヒドロペルオキシ酸の放射活性は白血球型の酵素蛋白に数分間で急速に取り込まれ、酵素蛋白に対しモル比はほぼ1:1であった。 5)血小板型の酵素に対しては、このような急速で定量的な15-ヒドロペルオキシ酸の取り込みは見られなかった。 6)15-ヒドロペルオキシ酸と反応させた白血球型の酵素蛋白をレーザーイオン化質量分析法で解析した結果から、15-ヒドロペルオキシ酸あるいはその誘導体が、酵素分子内に取り込まれていることが推定された。 以上の知見により、白血球型12-リポキシゲナーゼの″自殺的失活″と関連して、アラキドン酸から生成した15-ヒドロペルオキシ酸がさらに14,15-エポキシ酸に代謝され、そのエポキシドが開裂し酵素蛋白に共有結合することが示唆され、合成品を使って確認すべく検討中である。
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