研究概要 |
5′AMP活性化蛋白リン酸酵素(AMPK)は肝臓においてアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)やHMG-CoAレダクターゼをリン酸化することにより不活性化する。この酵素が心臓で強く発現していることから心臓における本酵素の役割が注目されていた。我々はisolated rat heartを用いた実験で、心臓に発現しているACCアイソザイムであるACC280の活性がAMPK活性と逆相関にあることを見いだした。本研究ではisolated rat heartを用いた虚血、再潅流のモデル実験系において虚血、再潅流時におけるAMPKの活性化がリン酸化によるものであることを明らかにした。すなわち、これらの心臓から抽出した粗画分をプロテインホスファターゼで処理することによりコントロール、虚血、再潅流いずれかのAMPK活性も低くなり差が認められなくなった。逆にATP,Mg2+存在下にインキュベートすることによってAMPK活性が大きく上昇し、やはり群間の差がなくなった。 つぎに、AMPKが実際に心臓のACCをリン酸化するかどうかを検討した。ACCをアビジンカラムを用いて精製したところ、心臓にはACC280の他にACC265も少量含まれていた。このACCを肝臓から精製したAMPKとATP,Mg2+存在下にインキュベートしたところ時間依存的にACC蛋白のリン酸化が認められた。このリン酸化はACC280の方がACC265よりも先行していた。また、リン酸化に伴いACC活性が減少した。 以上の結果から心臓においてAMPKはリン酸化を介してACCの活性を調節していること、また、虚血、再潅流時にAMPK自身がリン酸化により活性化されていることが明かとなった。
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