我々は、これまでにラテックス粒子に共有結合したシロイヌナズナ由来のYACやコスミドクローンのDNAを用いて、cDNAを選択することにより、染色体の領域特異的なサブライブラリーを作製し、そしてそのライブラリーからcDNAを単離する方法(cDNA selection法)を開発している。本研究では、花芽形成の遅延に関与する遺伝子(fwa)、ABAのシグナル伝達に関与する遺伝子(abil)、球状胚から心臓型胚への分化に関与する遺伝子(emb20)がマッピングされた領域付近のcDNAを、cDNA selection法を用いて単離した。 シロイヌナズナの第4染色体上に位置するabil遺伝子を含む領域をカバーする6個のコスミドクローンからなるコンティグを用いて実験を行った。これまでに、6個のコスミドクローンから計18種類のcDNAを単離した。その結果、これらコスミドコンティグ内に存在することがわかっていた遺伝子である、abil遺伝子、rps2遺伝子、カゼインキナーゼI遺伝子などが単離され、この方法により巨大なDNA領域内に存在するcDNAを正しく選択できることが示された。単離されたcDNAの中には、既知の遺伝子とホモロジーがないものや、また、カチオニックパーオキシダーゼ遺伝子や酵母のホスファチジルセリンデカルボキシラーゼ2遺伝子とホモロジーを有するものなど、新しい遺伝子が11個存在していた。単離された遺伝子の内、上記変異遺伝子の候補遺伝子について、アンチセンスcDNAを過剰発現させるベクターを構築し、遺伝子導入し形質転換植物(導入遺伝子の発現が抑制された変異体)の作出を進めている。その後、形質転換体での遺伝子の発現パターンおよび表現型を解析し遺伝子の機能を調べる予定である。
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