血清除去により過剰な細胞死を示すCHO細胞変異株を25株分離した。それらは低血清条件で野生株に比べて約40倍近い生存率であり、またアポトーシスの特徴をしめした。 FACSによる解析により、変異株では細胞周期の停止が不完全であるために細胞死をひきおこすことがわかった。またDNAに傷害を与える条件では細胞周期が停止しないため、8倍体細胞が蓄積した。 10%血清存在下では、野生株に比べて約1.5倍はやい増殖率をしめし、これは主にG1期が短縮しているためと判明した。放射能で標識されたチミジンの取り込みを調べたところ、DNA合成速度が上昇していた。分離したすべての変異株は高い増殖率を示した事から、細胞周期を調節する遺伝子に変異があるため、増殖を抑制させるシグナルを伝達する時にアポトーシスを誘導する様になったと推測される。 変異株は抗がん剤に対して強い感受性を示したので、この性質を指標として相補性テストをおこなった。野生株とそれぞれの変異株を融合して薬剤耐性を調べた結果、7株が野生株に対して優性であり、10株が劣性であった。次に劣性を示す変異株どうしを融合して薬剤耐性を調べた結果、少なくとも3種類の相補性群に分類される事が判明した。 変異株の原因遺伝子をクローニングするため、ジェノミッククローニングをおこなっている。変異株は抗がん剤の一種にたいして強い感受性をしめすが、ヒト由来のDNAを導入することにより耐性の細胞株が得られる。現在この耐性株を用いてジェノミックDNAクローンを分離する計画である。変異株のc-myc遺伝子の発現抑制やRB蛋白質のリン酸化抑制がおきているかについては現在解析中である。
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