研究概要 |
本年度の前期は昨年度に引き続き、BMP-2,BMP-4のニワトリ胚肢芽形成時における機能解析を行った。これまでの解析により、肢芽におけるBMP-2,BMP-4は肢芽水掻き間充織において発現し、肢芽の間充織における細胞死を制御していることを明らかにした。過去の実験発生学的な解析から、肢芽の水掻き間充織の細胞死過程には外胚葉性シグナルが必須であることが明らかにされている。そこで外胚葉除去時におけるBMP4の発現パターンを解析した。発生段階28の後肢芽第三水掻き領域の背側外胚葉を除去したところ、12時間後にBMP4の発現が消失した。この結果より、肢芽外胚葉がBMP-4の発現維持に必須であることが明らかになった。鳥類はその生態系における位置に応じて、水掻きの形が異なっており、この水掻きの形状は発生後期における細胞死パターンに依存している。ニワトリでは水掻き領域全体で細胞死がおこるのに対し、アヒルでは基部側の細胞死が誘導されない。これまでの解析から、ニワトリ胚では、BMP-2/-4が足の細胞死のパターンを決めていることが明らかにされている。そこで、ニワトリとアヒルの細胞死パターンの違いをBMP-4の発現パターンで説明出来るのか確認した。st.29のニワトリでは、第三水掻き領域の基部側において発現が観察されるのに対し、同じ発生段階におけるアヒルではまったく検出されなかった。以上の結果は種特異的な細胞死パターンをBMP-4が決めているという仮説を支持する。 後期はHoxa-13の標的遺伝子を同定するために、標的遺伝子と思われる候補遺伝子をクローニングし、Hoxa-13強制発現時における候補遺伝子の発現パターンの解析を行った。これまでに8種類の候補遺伝子について解析を行ったが、Hoxa-13依存的に発現量が変動する遺伝子は同定されていない。今後は候補遺伝子をさらに増やし解析を続ける予定である。
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