研究概要 |
今年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.マウスLimk-2遺伝子のクローニングに成功し,その発現様式の検討を行った.マウスLimk-2にはLimk-1遺伝子と同様にLIMドメインを2つ有するもの(″intact″Limk-2)と1番目のLIMドメインを半分欠いているもの(″variant″Limk-2)の2つのアイソタイプ・クローンが存在することを明らかにした.″intact″Limk-2は成体において脳,肝臓,肺をはじめとする様々な組織で発現しているが,″variant″Limk-2は主に脳にのみ発現が認められた. 2.マウスLimk-1,Limk-2遺伝子の胚発生過程における発現様式を検討した.マウスLimk-1,Limk-2はともに発生初期より発現が認められ,in situ hybridization法による解析の結果,8日齢胎児では前腸および後腸,神経摺や心臓原基に,10日齢胎児では脳,脊髄,背根神経節や鰓弓などに特異的なシグナルが見られ,神経発生過程における機能的重要性が示唆された. 3.マウスLimk-1,Limk-2ゲノム遺伝子のクローニングを行った.両遺伝子とも10数個のエクソンが数10Kbにわたって存在しており,互いに良く似た構造をしていた. 4.アフリカツメガエルのLimk-1ホモログ遺伝子(Xlimk1)のクローニングに成功し,その発現様式の検討を行った.Xlimk1遺伝子は発生初期より発現が認められ,特に神経胚後期では脳および各種感覚器原基,鰓弓に強く発現していた.この発現パターンは上述のマウスLimk遺伝子ときわめてよく似ており,種間を越えたLIM kinaseの神経発生過程における機能的重要性が示唆された.
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