哺乳類の分化成長因子MK/PTNファミリーと高い相同性を持つ、アフリカツメガエルptf-α、ptf-β遺伝子を単離しその発現様式を解析し報告した。ptf-αは、外胚葉神経予定域に出現し、尾芽胚にまで発生が進むと神経系を含め広範囲の組織で発現が見られるようになり、ptf-βは、発生初期には発現が見られず、尾芽胚期において、中枢神経系、特に後脳に特異的に発現が見られるようになる。 これらptfが中枢神経組織の発生分化にどのように関わっているかを調べるため、ツメガエル受精卵に、合成mRNA、発現プラスミドを注入し、発生時の変化を観察した。しかし両遺伝子とも高発現による発生時の形態異常は認められなかった。このことは、両遺伝子が生理的条件下でも比較的高発現しているために、発生異常を引き起こす量を注入できなかったことに起因すると考えられる。過剰発現、発現抑制を部位特異的に起こすことの出来るプロモーターを用いた実験系を確立する必要があると考えられる。 また、ptf-βのmRNAの3'に存在する、約79bpを1単位とする繰り返し配列が、その遺伝子発現に与える影響について検討した。受精卵に注入した、センス、アンチセンスのRNAによる特異的な変化は見られなかった。そこで、尾芽胚において発現している、この繰り返し配列を持つ遺伝子のcDNAをクローニングし、39クローンについて解析したところ、ptf-βが4クローン、レチノイン酸受容体が9クローン、未知遺伝子が、18種類26クローン存在した。繰り返し配列の方向性は、20種の遺伝子のうちptf-βと同一のものが、16種、逆方向が4種と、大きく偏った分布を示した。各遺伝子の発現様式については未解析であるが、卵細胞中ではptf-βと逆方向の繰り返し配列を持つ転写産物が大部分を占めることが報告されており、繰り返し配列の方向が、発生段階における発現時期を規定している可能性が示唆された。
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