1.ATP放出を引き起こす生理的・病態生理的因子の解明 (1)ウサギの各動脈(肺、大腿、腎、耳)標本に種々の血管作動薬を作用させて、ATPをはじめとする内因性プリンの遊離が惹起されるか検討した。肺動脈ではニコチンやイソプレナリンによるプリン遊離は観察されなかったが、メトキサミンやノルエピネフリン(NE)といったα_1作動薬によって、大量のプリン遊離が惹起された。他の動脈でも同様の結果が得られたが、耳動脈が一番プリン遊離量が多かった。耳動脈ではNEによるプリン遊離作用は、プラゾシン前処理や血管内皮の除去により消失した。また、Ca^<2+>除去液中においても消失した。さらに、実験条件を室温で行った場合においても、プリン遊離量は減少した。上の結果から、血管からのプリン遊離作用は血管内皮のα_1受容体刺激により惹起されること、細胞外Ca^<2+>と温度に依存することが示唆された。 (2)ウサギ耳動脈培養内皮細胞においても、NEにより大量のプリン遊離が惹起された。また、このプリン遊離作用もプラゾシン前処理により抑制された。以上の結果から、遊離プリンの起源は内皮であり、内皮のα_1受容体刺激により遊離されることが確認された。 2.神経伝達に対する効果器由来ATPの生理的意義の解明 ウサギ耳動脈に電気刺激(ES)または高カリウム刺激を加えることにより大量のNEおよびプリンの遊離が惹起された。ESおよび高カリウム刺激によるプリン遊離作用はプラゾシン前処理により、抑制されたが、NE遊離作用は何等影響を受けなかった。一方、ESによるNE遊離作用はPプリン受容体拮抗薬によって抑制された。以上の結果から、交感神経由来内因性NEのα_1受容体刺激によりプリン遊離が惹起されること、その内因性プリンによりNE遊離が調節されていること、さらに血管収縮という機械的刺激によりプリン遊離が惹起されるのではないことが示唆された。
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