研究概要 |
1.脳内モノアミン神経系の変化:前脳血流慢性低灌流負荷3・6・12週後の脳内各部位における,モノアミン及びその主要代謝産物7種の組織内含量をHPLC-ECDシステムを用いて測定した.その結果,低灌流負荷3週後の線条体において、dopamine含量が偽手術群に比べて有意に上昇し,線条体dopamine系代謝回転と前頭皮質serotonin系代謝回転が各々有意に低下した.いずれの変化も6週以降では有意な差は認められなかった. 2.知的機能に対する影響:ライトのon/offを手がかり刺激とするオペラント型弁別学習課題(mult VI EXTスケジュール)を用いて,負荷3週後の時点から本訓練を開始し,30日間継続した.正反応数/総反応数(弁別率)は,偽手術群が80.2(]ST.+-。[)2.8%に達したのに対し,低灌流群では68.0(]ST.+-。[)3.2%に止まった.一方,反応率(単位時間当りの総反応数)では有意差が認められず,弁別率の差は学習機能に主に依存していることが示唆された. 3.心理的要因の行動科学:痴呆に及ぼす心理的要因のうち,意欲に着目し,報酬刺激の強化値を測定する行動系として標準的に使用されるPR強化スケジュールをベースとした評価系の確立を目指した.報酬による行動の強化に重要とされる側坐核を6-OHDAにより両側性に破壊することで,評価系の有用性を確認した.その結果,実験期間中の体重制限を自由摂取時の95%にすると,対象であるsaline注入ラットとの間で有意な差が認められた.したがって,本研究で確立した評価系は意欲を検討し得ることが示された. 4.進行性神経細胞死の確認:抗GFAP抗体による免疫組織化学を行なったところ,低灌流負荷3週後の時点で偽手術群に比べ、低灌流群では線条体外側部を中心にGFAP陽性細胞が多く認められ,細胞傷害が示唆された.6・12週後ともに同様な所見が得られたが,進行性かどうかについては確認できなかった.
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