研究課題/領域番号 |
08780771
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経科学一般
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
藤野 一郎 杏林大学, 医学部, 助手 (30265764)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 神経伝達物質放出 / HPC-1 / syntaxin / 遺伝子発現 / アンチセンスオリゴヌクレオチド |
研究概要 |
神経軸索末端での神経伝達物質の放出は、脱分極により細胞内に流入するカルシウムイオンの局所的な極めて早い時間経過の濃度上昇により引き起こされる。HPC-1 syntaxinはこの一連の過程で、シナプス小胞がシナプス前膜へドッキングし、カルシウムイオン依存的にシナプス小胞がシナプス前膜へ融合する過程する過程において、SNAP25、VANP等との複合体を形成し、これを制御している蛋白である。我々はこれまで、HPC-1 syntaxinがアンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現量の低下により、培養神経芽細胞における神経伝達物質の放出量が増加することと、さらに、初代培養細胞においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現量の低下が神経突起の分岐を促進することを見いだし、これらのことから、HPC-1 syntaxinが神経細胞において、細胞内小胞の形質膜へのドッキング・融合の過程を制御することで、神経伝達物質の放出と、さらに、神経突起の分岐・伸長の過程に関与するものと考えられた。一方、HPC-1 syntaxin-1Aが、神経細胞の脱分極や、グルタミン酸アゴニストによる刺激で、mRNAのレベルから発現量が変化することを明らかにした。これはHPC-1 syntaxinの発現が神経細胞の活動に依存して変化し、神経細胞においてHPC-1 syntaxinの発現量依存的にみられた上述の現象が、HPC-1 syntaxinの遺伝子発現量の変化を介して実際の神経細胞においても生じる可能性があることが考えられた。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現量の低下では、培養神経芽細胞における神経伝達物質の放出量が増加がみられた一方で、HPC-1 syntaxinの抗体を細胞に投与した複数の実験からは、神経伝達物質の放出に対して促進的に作用したという報告と、抑制的に作用したとする報告がなされている。このことはすなわち、これらの抗体がHPC-1 syntaxinの異なる機能ドメインを認識し、HPC-1 syntaxinがシナプス小胞の形質膜への融合の各ステップで、促進的・抑制的に制御する機能ドメインより形成されることが考えられる。今後、HPC-1 syntaxin分子のアミノ酸欠失・変異組換え体を発現させ、各ドメインごとのドッキング・融合過程での役割を検討していきたい。
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