研究概要 |
1.ミミズ巨大軸索の細胞内カルシウム動態解析 ミミズ巨大軸索にカルシウム濃度感受性色素(Indo-1またはCalcium Green-1)を電気泳動的に注入し,共焦点レーザ顕微鏡により細胞内カルシウムを可視化したところ以下のことが分かった. (1)巨大軸索中のカルシウム濃度は長軸方向に不均一に分布していた. (2)thapsigargin処理により軸索部位ごとに異なった細胞内カルシウム動員が生じた. (3)側神経側を電気刺激すると、巨大軸索局所でカルシウム濃度上昇した. 以上の結果はミミズ巨大軸索に,カルシウム動員機構(カルシウムチャネル,小胞体など)が不均一に分布していることを示している. 2.ミミズ学習連合学習装置開発のための予備検討 機械または電気刺激による連合学習を行うために,実際にミミズに刺激を加えた時の神経系の挙動をカルシウムおよび,膜電位イメージング法と電気生理実験により調べた.巨大軸索のカルシウムイメージングと電気生理実験から以下のことが判明した. (1)巨大軸索を吸引電極により連続刺激すると,伝播する興奮電位は徐々に減弱し,最後には伝播しなくなった.またこの減弱の時定数は刺激頻度の増大に伴い減少した. (2)興奮電位伝播の減弱は,巨大軸索内カルシウム濃度の上昇を伴った. 以上の結果はミミズの「慣れ」現象を巨大軸索内部のカルシウム濃度上昇により理解できる可能性を示す. 上記1,2の結果から,ミミズ巨大軸索はマルチコンパートメントからなる神経情報処理装置であることが明らかになった.またこの巨大軸索内のカルシウム動員はミミズの種々の学習と関連しているものと思われる.
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