小脳プルキンエ細胞においてカルシウムスパイクがその樹状突起部位で発生し、それによって引き起こされる樹状突起部位での細胞内カルシウム濃度の上昇が多くの生理機能の発現に重要な役割を果たしている事が示唆されている。しかしながら、プルキンエ細胞の樹状突起の構造の複雑さから、樹状突起部にどのようなカルシウムチャネルが分布し、どのようにカルシウムスパイクを発生してるか今まで調べられてはいなかった。本研究では、冷却CCDカメラを用いた高速カルシウムイメージング法とスライスパッチ法を組み合わせる事により、ラット小脳プルキンエ細胞の樹状突起部位でのカルシウムチャネルの分布とカルシウムスパイク発生における機能を調べた。その結果、プルキンエ細胞の樹状突起部位には、従来報告されている、オメガ-アガトキシンにに阻害を受ける高閾値活性化型のP型カルシウムチャネルと、低濃度(50〜100μM)のニッケルに阻害を受ける低閾値活性化型の(T型もしくはE型)の2種類のカルシウムチャネルが分布している事が分かった。更には、N型やL型、Q型といった他の種類のカルシウムチャネルは樹状突起部位には分布していない事も分かった。プルキンエ細胞に分布しているこれら2種類のカルシウムチャネルのうち、P型カルシウムチャネルはカルシウムスパイクの発生にそれ自身が役割を負っているのに対して、低閾値活性化型カルシウムチャネル(T型もしくはE型)は、スパイク発生をトリガーするために必要な膜電位の閾値を決定している事が分かった。
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