研究概要 |
1)脳虚血用MRI特殊脳定位固定装置およびラジオ波照射・測定用特殊プローブの開発・作製を行い,脳虚血時に安定したMRIのデータを得ることに成功した.2)ラットの中耳内に2.5%Polyvinylpyrrolidoneを注入して中耳内の空気の影響を取り除くことにより,高磁場での静磁場の乱れを最小限に抑えることができた.これにより,高磁場での脳のMRIを安定して撮像することに成功した.3)レーザー血流計を用いて,MRI撮像中の虚血方法と同じ条件下で脳内の血流量を測定し,MRIデータと比較・解析するデータを得た.4)一過性脳虚血ラットのモデルを用いて,Rapid Inversion Recovery(RIR)法(T1強調画像),Gradient Echo(GE)法(T2^*強調画像)およびSpin Echo(SE)法(T2強調画像)による一過性脳虚血に対する脳内血行動態の解析を行なった.T1強調画像では,信号強度は,脳虚血直後から脳の全体にわたり減少し,脳虚血後約10分には著しく減少した.血流再開後,信号強度はすぐに虚血前の値にまで回復し,約10分から60分後には脳虚血前の値よりも増加した.脳虚血後2日と7日では,脳虚血前と比較して信号強度の変化は明かではなかった.一方,T2^*強調画像では,脳虚血による信号強度の変化はほとんどみられなかった.さらに,T2強調画像では,脳虚血後2時間の信号強度は,いずれの領域でも変化しなかったが,脳虚血後2日および7日では,海馬体の信号強度が増加し,海馬体が選択的に障害されていることが判明した.5) 以上の結果から,RIR法によるT1強調画像は,脳虚血に対して過敏に反応し,血流の変化を測定するのに適しているが,GE法によるT2^*強調画像は,脳虚血に対して感受性が劣っていることが証明された.また,SE法によるT2強調画像は,脳虚血に対して反応しなかったが,神経細胞壊死などの組織学的病変の検出に適していることが明らかとなった.
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