研究概要 |
中枢のドーパミンニューロン系に特異的に作用する栄養因子が神経回路障害時に増加することが明らかとなってきた。しかし、その蛋白の同定はまだ行われておらず、本蛋白の同定は、パーキンソン病患者に対して脳神経移植などの治療を行う上で重要な要因の1つと考えられる。まず始めに黒質を破壊したモデルパーキンソン病ラットを作製し、その尾状核組織抽出液より産生される活性因子をゲル濾過、イオン交換、ヘパリンアフィニティのカラムクロマトグラフィー法にて分離精製した。精製段階において本物質は、FGFと同様にヘパリンカラムに特異的に吸着されるFGF,NGFとは異なること、また脳幹のドーパミンニューロン及びPC12D細胞の突起伸展・生着を高めることを明らかにした。しかし、精製が進むにつれて活性分画が数種類に分かれ、その中には微量すぎて精製に困難である分画も存在した。そこでDifferential Display法を用いて、遺伝子からの同定も同時に行うことにした。その結果、黒質破壊側で優位に増加しているmRNAを数種類見つけた。これらはalpha-actinin,creatine kinase,Human clone HFBEF54に高いホモロジーを持つ遺伝子であった。しかし、これらがすべて栄養因子の活性を持つわけではなく、その配列情報から判断して目的の栄養因子の遺伝子である可能性は逆に少なかった。今後は、蛋白精製によって明らかにされる情報をもとに、例えばヘパリン結合部位の存在など、スクリーニングをかけ、目的の遺伝子の同定を行う予定にしている。
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