NODマウスは自己免疫性1型糖尿病モデル動物であり、その発症要因についてはMHCに連鎖した遺伝子のほか複数の遺伝子の関与が報告されている。しかし、その詳細は現在の所不明である。NODマウスの胸腺には胸腺上皮細胞の形態学的異常が認められ、そのため胸腺皮質での異常なβ傷害性T細胞のポジティブセレクションが行われ、ラ氏島炎が誘発されると考えられている。一方、NODマウスの血清中には抗胸腺抗体が存在しており、その標的抗原は不明であり、その抗体は胸腺の異常に関与していると思われる。NODマウスの血清中に含まれる抗胸腺抗体をウエスタンブロット法により解析した結果、胸腺の30kと33kの膜蛋白を認識していた。これは自己免疫疾患モデル動物(NZB)の血清中に認められる抗原と一致した。さらに、非刺激状態のNODマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞を細胞融合させ、抗胸腺モノクローナル抗体産生するハイブリドーマを樹立した。このモノクローナル抗体は血清中に含まれる抗胸腺抗体と同一の30kの膜蛋白を認識していた。さらに、この抗体のサブクラスを調べたところIgMであった。このことはNODマウスで認められた胸腺細胞傷害性抗体がIgMであることと一致した。この抗体をFITC標識し蛍光抗体法で、生体内の組織分布を検討した。造血組織の胸腺、脾臓の一部の細胞膜で中程度の発現があったが、卵巣や小腸などの皮下組織で強い発現が認められた。現在、イムノスクリーニング法により、30Kの蛋白を同定中である。
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