研究概要 |
海綿骨は骨梁と呼ばれる硬組織と粘性の高いゲル状流体の骨髄とで構成されており,本研究では初めに,海綿骨の力学的特性に及ぼす骨髄液の影響について検討を行った.実験ではウシ海綿骨に対して静的圧縮試験を行い,種々の温度,静水下における応力-ひずみ関係を調べ,海綿骨試験片の力学特性と温度および静水圧の影響について調べた.その結果,静的圧縮下における海綿骨試験片の弾性率,最大応力および吸収エネルギは静水圧の上昇に伴い増加した.また,これら力学的パラメータはいずれも温度の上昇に伴い減少することを明らかにし,骨内部のコラーゲン繊維の化学的構造変化が力学的特性に影響を与えていることを示唆した. 次に,海綿骨の材料特性を非破壊的に評価する方法として超音波試験法を確立した.実験では,ウシ大腿骨遠位部から採取した立方体形状の試験片を対象に超音波伝播試験を行い,3つの軸方向弾性率を求め,比較のためにすべての試験片に対して圧縮試験を行った.その結果,周波数5MHzの超音波による動的弾性率は圧縮試験による静的弾性率よりもかなり高い値となるが,両者の相関関係は良好である.本実験で用いた海綿骨は少なくとも横等方性弾性体と見なすことができる.大腿骨の関節面に平行な面内では,弾性率は前方側よりも後方側の方が大きな値となる傾向がある.また,超音波入射方向と骨梁配向の関係がおおよそ定まれば,超音波弾性率と見かけの密度および骨塩量との間には正の線形的相関関係があること等を明らかにした.
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