研究概要 |
緑色光合成細菌Cb.limicolaの集光器官クロロゾーム中に多量に含まれるバクテリオクロロフィル(BChl)c同族体の意義を明らかにするため、平成8年度においては4種のBChl c同族体[E,M],[E,E],[P,E]および[I,E]BChl c_Fのうち主要成分であるR-[E,E]およびR-[P,E]のBChl c_Fを用いて水-有機溶媒中での会合体形成におよぼすpHおよび塩効果を検討し、得られた会合体の構造をFT-IRを用いて調べた。両同族体ともQy吸収極大波長はpHが低いほど赤色シフトした。赤色シフトは高濃度の塩によってもひきおこされたが、R-[E,E]BChl c_Fのみが溶媒の変化に敏感であった。低いpH領域では両同族体ともアモルファス構造を示したが、水-有機溶媒のみの系で、R-[P,E]BChl c_FはMg・・・OH(3^1)・・・O=C(13^1)lの規則構造を示した。この構造はR-[E,E]BChl c_Fでは見られなかった。これらの結果はクロリン環のC-8位の側鎖の置換によって会合挙動に大きな相違をもたらすことを示し、このことは緑色イオウ光合成細菌におけるクロロゾームにおけるロッド構造が均一なものではなく、BChl c各同族体がそれぞれ別個のロッドを形成していることを示唆する。これはクロロゾームの構造解明に大きく貢献するものと考える。平成9年においては、4種のBChl c同族体のうち微量成分である[E,M]および[I,E]BChl cの組成が大となる培地成分の探索中に、カリウムイオン[K+]を制限した培地を用いるとBChl cの生合成が阻害され、その前駆体であるBChl dが生成することを発見し、BChl c_Fの生合成機構について、従来の定説を覆す新しい機構を提案した。また、BChl d同族体を単離し、水-DMSO系でのその会合挙動を対応するBChl c同族体と比較検討し、両者は全く異なることがわかった.
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