研究概要 |
1. 物語文章理解における文脈と知識情報の統合的な処理方式の構築へ向けて,物語文章理解において,本質的で,かつ重要と思われるいくつかの問題について基礎的な考察を行った. ・物語文章中のゼロ代名詞による照応現象の実例を分析し,ゼロ代名詞による照応の解析において利用される様々な知識や文脈情報とそれらの具体的な処理操作について考察した. ・物語文章における登場人物の理解のための基本的なしくみについて考察を進めた.物語文章中の主観的文,客観的文,会話文における視点と登場人物の基本的な役割について考察し,登場人物の理解に関する基本的な項目を整理し,小学国語文章問題における登場人物に関する質問の解決過程で利用される文脈と知識情報の利用のしくみについて具体例に即して考察した. ・物語文章で記述されている事態の間の時間的および意味的関係の解析のための基礎的な考察を行った.物語文章中のなかどめ複文について,副節と主節によって記述される事態の間の関係の基本的な分類を行い,事態間の意味的関係を解析するために必要な知識と推論について基礎的な考察を進め,さらに,なかどめ複文の意味表現について考察し,意味表現としての概念構造のレベルで文脈と知識に依存した事態間の意味的関係の解析を行うための基礎を与えた. 2. 具体的,かつ自然な物語文章を資料として解析を進めるための基礎として,物語文章テキストベースの構築とテキストベースを解析するための情報抽出ツールや文章解析ツールの開発を行った.具体的には,まず,教育出版(株)発行の小学校国語教科書テキストベースを構築し、KWICツール、文章骨組み抽出ツールなどの情報抽出ツールの開発,および同一名詞共起抽出プログラムなどの文章解析ツールの開発を行った.
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