研究概要 |
目的 AD大脳に特徴的に沈着する老人斑アミロイドのここ数年の研究の進歩はβ蛋白(Aβ)からなる脳アミロイドが神経原線維変化や神経細胞の消失より数十年早く出現する早期の最も重要な変化であることを明らかにした.さらに,家族性ADの解析はβAPP(AD1),Apolipoprotein E4(AD2),第14番染色体上のS182(presenilin-1:PS-1)(AD3),さらに第1番染色体上のE5-1(presenilin-2:PS-2)蛋白(AD4)など少なくとも4つの原因遺伝子によることが最近同定された(Hyslop St G,1995).本研究では1)新たなPS-1変異遺伝子を有する家族性AD家系の同定.2)PS-1,PS-2のwild type遺伝子のクローンニングと変異presenilincDNA作製,3)特異抗体の作製,4)発現細胞の確立,5)点変異による発現蛋白代謝の変化とAβの分泌に及ぼす影響の測定,6)AD脳と正常脳の組織学的および生化学的検索,7)点変異を有するPS-1を発現するtransgenic miceにおける,点変異の意義を検討した. 1)結果 2AM/JPN1家系とSD6家系で新たなpesenilin遺伝子変異(A260V,A285V)と従来の孤発例ADと同様の脳病理変化をみとめた.2)クローニングしたPS-1,PS-2のwild typeに点変異を有する各primerをもちいてmutant PS-1(M146L,A246E,L286V,Exon9,L392V,C410Y)とmutant PS-2(N141I,M239V)を作製した.3)PS-1のN末端22アミノ酸(MTELPAPLSYFONAQMSEDNHLS)とC末端15アミノ酸(LVQPFMDQLAFHQFYI)に対する抗血清(HSN-2,HS-C)を得た.4)wild type PS-1とwild type PS-2のtransient,、stable cell lineを確立して検討すると,44/40kDのfull length PS-1と26/25KDのN末端分画(NTF),17/16KD(CTF)のC末端分画を認めた.293細胞では46/45kDのfull length PS-2と28kDのN末端分画(NTF)を認めた.5)mutant PS-1を発現した系でも同様の44/40kDのfull length PS-1と26/25KDのN末端分画(NTF),17/16KD(CTF)のC末端分画,45/46kDのfull length PS-2と28kDのN末端分画(NTF)を認めた.遺伝子変異によるこれらの生理的なNTF,CTFに変化はみられなかった.6)βAPPNL/CEP4をtransfectionしたdouble transfection stable cell lineで検討した培養上清のAβ1-40,Aβ1-42は明らかに増加していた.7)AD脳5例,正常対照脳5例の大脳で26/25KDのNTFと17/16KDのCTFが認められた.8)prion promoterのもとにPS-1 M146L,C410Yを発現するtransgenic miceではfull length PS-1は44/40kDの蛋白で26/25kDのNTF,17/16kDのCTFとして同定された.点変異の有無による異常な切断分画の出現はみられなかった.9)AD患者8例,正常対照脳8例の海馬の免疫染色ではPS-1は神経細胞胞体や神経突起存在し,AD脳では神経原線維変化,dystrophic neurites,curly fibersにも存在した.
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