研究概要 |
被験動物として9週齢と12月齢のWinstar系雄性ラットを使用した。ラットをペントバルビタールで麻酔下に,脳定位固定装置に固定し,脳内透析用プローブを視床下部前部に挿入し,術後24時間して人工脳脊髄液を用いて潅流を行い,回収された潅流液中のノルアドレナリン含量を電気化学検出器付きの高速液体クロマトグラフィーにより定量した。安定した基礎放出量が得られた後にストレス実験を開始した。 ノルアドレナリンの基礎放出量は9週齢のラットでは2.11±0.22pg/sample(N=13),12月齢のラットでは2.29±0.34pg/sample(N=11)であり,基礎放出量については両群間に差がみられなかった。次にこれらのラットに心理的ストレスを負荷した。心理的ストレスには透明な壁で仕切られた9区画からなるコミュニケイション箱を用いた。この箱の床は電撃用の格子になっているが,中央部の区画にはプラスチックの板が敷かれており,そのためこの区画に入れられたラットは自分自身は電撃ストレスを受けることはないが,周囲のラットが電撃を受けて示す鳴き声,脱糞,排尿,もがき,跳び上がりなどの情動反応にさらされる。この心理的ストレス負荷により,潅流液中のノルアドレナリン含量は9週齢のラットでも,12月齢のラットでも有意に増加したが,増加の程度は12月齢のほうが低く両者間に有意な差がみられた。 これらの結果から,心理的ストレスによって生じる視床下部のノルアドレナリン放出亢進が加齢により減弱してくることが示唆された。
|