研究概要 |
免疫組織化学的研究から、変性疾患ではアストロサイトでの成長抑制因子(GIF)発現がglial fibrillary acidic protein(GFAP)発現と逆相関しているが、他の神経疾患ではGFAP発現と相関していることがわかっている。そこで、GIF発現の誘導や抑制がどのような分子機構でおこるのかを明らかにする目的で以下の研究計画を実施した。 培養ラット大脳から調製したアストロサイトを使い、(1)GIF発現がアストロサイトの分裂増殖やneuroglial interactionによって変化するかどうかを、蛋白およびmRNAレベルで調べた。その結果、GIF発現は、GFAP発現とは異なり、細胞の分裂増殖やneuroglial interactionとは無関係におこっていた。(2)GIF発現が細胞成長因子やサイトカインによって誘導・抑制されるかを調べたところ、EGFはGIF発現を誘導したが、nFGFや50%酸素はGIF発現を変化させなかった。EGF,bFGF,50%酸素はGFAP発現を変化させなかった。IL-1βはGIFmRNAとGFAP mRNAを減少させるが、GIF蛋白を増加させることがわかった。IL-1βとEGFによるGIFmRNA発現の時間変化を調べたところ、IL-1βでは、添加1-2時間後には一旦mRNAが増加したが、8時間後以降は減少していった。EGFの場合は、逆に8時間後までは減少し、以降増加していった。IL-1βとEGFによるGFAP mRNA発現もGIF mRNA発現と同様の時間変化を示した。IL-1β添加の場合に認められたGIF蛋白発現とmRNA発現との不一致の原因は現在のところ不明である。(3)培養アストロサイトから、24時簡に分泌されるGIF量は、細胞内レベルの約1/3に達していた。bFGF、EGF、IL-1β添加によって分泌量は変化しなかった。
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