研究概要 |
GPIアンカーは、真核細胞に広く分布しGPIアンカー型蛋白を細胞膜表面につなぎ止めるための必須の構造であり、種間でその構造はよく保存されている。GPIアンカー生合成に必須であるpig-a遺伝子破壊マウスは致死であり、マウス個体発生におけるGPIアンカー型蛋白の重要性が指摘されている。Thy-1,Ly6で代表されるGPIアンカー型蛋白が、多数発現しているTリンパ球の成熟機構あるいは活性化にはたしている役割をコンディショナルジーンノックアウトを利用し個体レベルで解析した。 (1)胸腺Tリンパ球の選択機構に対するGPIアンカー型蛋白の役割 Pig-a遺伝子にloxP部位を挿入したマウス(Piga-loxP)と未分化T細胞から遺伝子発現を誘導できるLckプロ-モーターの下流にCreを連結したマウス(Lck-Cre)マウスを交配させた。胸腺Tリンパ球を解析すると、交配された変異マウスでGPIアンカー型蛋白は欠損していたが、完全欠損でない細胞も混在していた。正と負の選択機構は正常マウスに比べ差がみられなかった。 (2)末梢成熟Tリンパ球の活性化あるいは細胞死に対する影響 変異マウスにおいて末梢成熟Tリンパ球のGPIアンカー型蛋白は完全欠損していた。この細胞を種々のマイトジエンで刺激した(ConA,抗CD3,PMA+Ionomycine)。これらの刺激に対して、変異細胞は正常の反応を示した。さらにin vivoにSEB(staphylococcus enterotoxinB)を投与することで、in vivoに於けるTリンパ球の活性化とそれに続く細胞死を観察した。ここでも変異細胞は、正常細胞と同じ程度に、活性化とそれに続く細胞死が観察された。 以上に結果は、多数発現しているGPIアンカー型蛋白はTリンパ球の成熟機構あるいは活性化に必須でないことを示している。
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