研究概要 |
今年度に行った研究は以下の通りである。 1、 昨年までの資料の分析から、 「無我」を支える重要な思想として「縁起」があり、そこでは現象の顕れを一時的で非不変的なとして理解しないことが強調されることがわかった。また「無我」という状態に特徴的な認知として「事象をあるがままに観る」ことがわかった。そこで今年度は、東洋的な修行体系(仏教あるいは禅の行法)の中から「事象をあるがままに観る」こと中心的な要素とする技法「自観法」の特徴と効果について、臨床心理学的および人格心理学的視点から考察した。さらに、その概要をシンポジストとして、Asian Division World Council for Psychotherapy,International Symposum“Psychotherapy and Oriental Thought"において、"A Technique of Self-Awareness in the East"と題して発表した(現在、改訂版を執筆中。英語の研究論文集として公刊される予定)。 2、 現在の大学生が東洋的な自己・自我観である「無我」をどのように認識しているのかについて調査を実施し、その結果を日本性格心理学会第7回大会(1998)にて報告した(表論文集1Pp.72〜73: 「大学生における『無我』概念のイメージ)。 3、 仏教大学で仏教の認識論(特に世界観について教育を受けている学生と一般の学生では、ストレス事態の認識にどのような違いが認められるのかについて比較検討を行った。結果は来年度以降に報告する予定。 4、 西洋的な自我の一つの特徴である「他者との比較による自尊感情」と、他者との比較を経ない自尊感情が精神的健康に与える影響につい比較検討を行った。結果は来年度以降に報告する予定。 5、 1、で報告した東洋的技法「自観法」を1ヶ月間実施し、その効果の査定研究を行った。結果は来年度以降に報告する予定。
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