研究概要 |
理論的研究の平成9年度の成果として,前年度迄に得られた定常流の特徴付け定理,テープリッツ条件を満たす非負定符号行列関数が与えられたとき,揺動散逸定理を満たすKM_2O-ランジュヴァン行列の構成定理,与えられた非負定符号行列関数を相関行列関数とする定常流の構成定理の応用として,定常流の定常性を満たすすべての延長と相関行列関数の非負定符号性を満たすすべての拡張を求める定理を証明した.これらの拡張定理の応用として,一つは新しい予測公式を求めたこと,二つはウエーブレット変換論との関連から時間域と周波数域での解析をKM_2O-ランジュヴァン方程論に導入する糸口をつけたことである. 実証的研究の平成9年度の成果は二つある.第一に,前年度迄に得られた決定性のテストの精密化として,与えられた時系列データが決定性のテストを通過するとき,その時系列の時間発展を記述する力学的ダイナミクスを推定する方法を求めた.第二に,力学理論に基づくカオス時系列解析における埋め込み次元の推定問題に一つの解決を与えた. 当該研究によって,既存の時系列解析で天下り的に仮定されていた時系列の定常性と決定性を与えられた時系列のみから検証する方法が与えられ,理論を現象に適用する際には理論が依っている前提を検証することを憲法とする実験数学の一つの姿を提示した.
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