研究概要 |
2次元超流動転移はヘリウム4吸着膜で精力的に研究されてきたテーマである。この相転移の機構はコスタリッツ・サウレス転移(K-T転移)として理解するのが定説とされている。K-T転移では,超流動状態を記述する2次元複素秩序変数に特有な位相欠陥である量子化渦が重要な役割を演じるが,秩序変数の位相欠陥が系の応答関数に相転移という形で過激な変化を引き起こすことは極めて特異な現象と言える。 しかしながら,一般に広く信じられているK-T理論による2次元超流動転移の説明も磐石ではない。例えば,各種の測定を定量的に説明する際に,いくつかのパラメータが現れるが,その値が測定の種類ごとに大きく異なっていたり,大きさが不合理な値であったりすることは,しばしば指摘されている。 ヘリウム膜の超流動転移点近傍における,第3音波の減衰率の周波数依存性を系統的に調べることで,これまでの定説であるK-T転移による解釈の妥当性を評価することが本研究の目的である。 ヘリウム3クライオスタットを製作し,第3音波の透過スペクトルを測定した。その過程で第3音波の他に気層中を伝播する通常の音波の寄与が無視できない程度であることを見い出し、その効果を分離するための装置の改良を行なった。15EA05:現時点で当初目標とした課題に完全な結論を得るにはいたっていないが、スペクトルの推定法の改良などを含め、第3音波の測定において、世界的に見ても圧倒的な優位を誇るところまで来ることができた。
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