研究概要 |
平成8年度に引き続き,平成9年度には,新たに4回の重力測定と3回の水準測量を実施した.また,地下水位観測は継続して実施している.さらに1997年9月には,本研究に関連した東京大学地震研究所の一般共同研究(代表者:由佐悠紀)の一環として地球熱学研究施設内での絶対重力測定も実施した. これらの結果を下記に要約する. 1.重力変化と水位変化 1997年は,近年では1993年につぎ降水量が多く,地下水位の急激な上昇が観測されているが,一般的な重力変化と水位変化の関係については,ほぼ従来と同様の傾向が確認された.すなわち,第1主成分に相当する地下水位変動と直接的に関連した重力変化が約60%,第2主成分に相当するより深部の地下水変動に関連すると思われる変動が約24%で,これらの空間的なパターンについてもほとんど変化していない. 2.水準測量 水準変動としては,当初,年周的な変動の存在を疑い測定間隔等の設定を行ったが,結果としてそれを示す有意な変動は見いだされなかった.市街地における測定精度等を考慮すると,少なくとも年周的な重力変化の直接的な原因としては水準変動を考慮する必要がなさそうであることが判明した. 3.絶対重力測定 絶対重力測定の結果については,1995年6月における測定との比較から,同時期におけるラコスト重力計で測定されている重力変化と同様の傾向を示すことが確認された.しかし,変化の振幅についてはラコスト重力計の結果よりも大きく,水位変動とはより調和的であることから,この結果は,従来不変と考えていた重力基準点での重力変化の可能性も示唆するものである.ラコスト重力計による測定精度の問題もあり,この結果が有意であるかどうかはすぐには断定できないが,今後,従来の重力と地下水変動の解釈についての再検討も含め,より詳細な検討が必要である.
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