研究概要 |
宮城県北部に分布する平磯層(三畳系スミシアン階)の古生物調査を行い,海外を含む三畳紀初期の海洋動物群との比較を行った結果,以下のことが明らかになった. 1) 平磯層の動物群は,二枚貝Eumorphotis, Neoschizodus, Leptochondrla,ウミユリHolocrinusなどを含み,低多様度かつ汎世界的な分布を示す動物群が認識された.またその構成は堆積環境の異なると考えられる,アメリカ西部に分布する下部三畳系の動物群とも極めて類似している. 2) しかし,ウミユリHolocrinusのように,世界の他地域ではスパシアン階から回復している動物群が平磯層ではすでにスミシアン階から出現していたり,スピッツベルゲンのように,三畳紀初期からかなり多様度の高い地域も存在することから,この時期の動物群の回復は,グローバルに同時期に起こったのではなく,地域的にその回復が時間的に前後していたことが示唆される. また,アルゼンチン,パタゴニア北部のK-T境界直上の地層から海洋動物化石を採集し,検討した結果,以下のことが明らかになった. 1) 絶滅直後の暁新統からは,低多様度の動物群が卓越し,莫大な数のGlyphaeinae亜科のカキ類に少数のTurritellidaeが伴われる.しかしこれより約10m上位の地層には,造礁性サンゴ,Venericardiaなどが豊富に産するベッドが含まれている. 2) 上の結果から,南極半島の暁新世のデータを考慮に入れると,南半球の少なくとも一部ではK-T絶滅後の早い時期に,新第三紀以降に太平洋で広く見られる海洋動物群の先がけといえる動物群がすでに出現していた可能性を示している.
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