研究概要 |
多くのシクロデキストリン(CD)分子がさらに環状に連なって生成する一群のド-ナツ状の超分子集合体として定義される“スーパーシクロデキストリン"を合成するために,3種の6-位に長い置換基をもつ完全メチル化α-CDモノマー1〜3の自己会合について検討し,以下の結果を得た. 1.モノ-6-ヒドロキシ完全メチル化α-シクロデキストリンと4-フェニルアゾフェノールとをm-キシリレン骨格を介してエーテル結合で連結した系1を合成した.1の重メタノール中でのNMRスペクトルには新しい分子種に基づく独立したシグナル群が観測された,それらのシグナルは温度には依存するが濃度依存性を示さなかったことから新しい分子種は分子内包接錯体であると結論した.飽和移動観測実験によって分子内包接錯体の安定度定数Kaを0.38と決定した.重水-重メタノール混合溶媒系ではほぼ100%分子内包接錯体として存在することが明らかとなり,芳香核プロトンの帰属によって分子内包接錯体の構造に関する情報が得られた. 2.上記の系1のp-キシリレン異性体に相当する系2を合成し,1と同様な^1HNMR法により自己会合を検討した.2の重メタノール中でのNMRスペクトルには新しい分子種は観測されなかったが,重水の含量が増すにつれ分子間錯体の新たなピークが出現した.濃度依存スペクトルを検討した結果,分子間包接錯体の構造は2級水酸基側からアゾベンゼン骨格を互いに包接し合った差し違い形2量体であると結論した. 3.モノ-6-ヒドロキシ完全メチル化α-シクロデキストリンと4-フェニルアゾベンゾイルクロリドから相当するエステル系3を合成した.3も2と同様に分子間錯体を形成するが,濃度依存性から5〜11量体であると見積もられ,スーパーシクロデキストリンが生成している可能性を否定できない.現在,正確な分子量の測定方法について検討中である.
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