研究概要 |
1.由良川下流域で自然が保全されている波美(京都府大江町)地点において,生息場所基盤構造(微地形,河川流路,流速環境,底質)と底生動物の微細分布の調査を行い,大規模河川における生息場所区分と存在様式を示した.横断型早瀬,寄り洲ツルヨシ群落,バックウォーター等の生息場所が平地流に特徴的で,堆積物の動態と密接に関連していた.このような水域に特徴的なGコカゲロウ等やヒゲナガトビケラ科等を確認した. 2.奈良県の高見川においては,微地形・微環境・底生動物の微細分布についてのモニタリング調査(7年目)を実施し,各種の中州と寄り洲について,微地形,環境,河床内間隙水,底生動物、植生の比較調査を行った. 3.上記の初年度(1991年)の資料を分析し,底生動物の種類相をまとめ192タクサ以上の分布を確認した.その内訳は,トビムシ目2,カゲロウ目44,トンボ目1,カワゲラ目20,甲虫目12,ヘビトンボ目1,カメムシ目2,トビケラ目28,ハエ目(ユスリカ類以外30,ユスリカ類38以上),ダニ類4,等脚類1等だった.微細分布から生息場所の再区分を行い,岸辺を中心に16区分を確認した. 4.高見川では,砂礫堆上に発達する植物群落の植生とフロラ調査を実施した.21個の寄り洲や中州に出現した種数は67種で,1年草は33種で多年草や木本は34種だった.洲面積と種数との間には,有意な相関が見られた. 5.由良川中流(京都府美山町)では,砂礫堆を中心に,河川環境,底生動物の微細分布,砂礫堆上の植物群落の分布状態についての現地調査を実施した.植物群落については,高見川より安定で長期に存在している中州の経年変化を追跡している. 渓流河川の土砂水理と生息場所,とくに流れによる土砂の運搬・堆積が,渓流地形を形成するプロセス,堆積構造と地中水(河床内間隙水)との関係を紹介した.
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