研究概要 |
軟体動物の閉殻筋のキャッチ機構を解明する前段階の実験として,キャッチ筋に近接して閉殻筋中に存在する横紋筋の部分を対象にした予備的な実験を行った。横紋筋を電子顕微鏡観察すると,骨格筋のフットプロテインとよく似た粒子がSRと細胞膜の間に観察された。これらの粒子は詳細にサイズを測定すると,骨格筋のフットと一致した。また,その分布位置から軟体動物横紋筋のフットプロテイン(リアノヂンリセプター)であると判断した。つぎに骨格筋材料のSR調整法を参考にして,軟帯動物横紋筋からのSR調整法を確立しようと試みた。結果は少量の材料で,骨格筋のSR調整法とほぼ同じ方法でSRフラクションを得ることができた。このサンプルは電顕的にもSDSによる解析でも十分使用できるサンプルであった。SDS-PAGEによれば,ウサギ・カエルのリアノヂンリセプターと同じ移動度のタンパク質が確認でき,軟体動物横紋筋でのフットプロテインの存在が明らかとなった。これらの要旨はJournal Cell Structure and Function22(1)に発表した。 平成9年度には,材料をキャッチ筋にして上記の方法でCaゲートであるフットプロテインを観察・解析する予定であったが,材料の入手が計画どおり進まず,キャッチ筋のフットプロテインは精製されていない。また,キャッチ筋の太いフィラメントの解析も行う予定であったが,結論は得られていない。キャッチ筋の太いフィラメントについてはハマグリ,カキ,イガイ,ホタテガイについて,すでにパラミオシンコアの表面のパターンが異なることを報告しており,各種キャッチ筋のパラミオシンが共通であるかどうかを検討する予定にしていた。しかし,同キャッチ筋から異なるタイプのパラミオシンが得られるなど,再検討を要する結果が得られたことから,研究は中断せざるを得なかった。
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