研究概要 |
本研究は、作業能率と快適性の両側面からオフィスの光環境を客観的に評価するために、オフィスワークのような精神的作業における最適な覚醒水準を評価するための手法を開発することを目的とした。覚醒水準の指標として背景脳波と随伴性陰性変動(CNV)のふたつを用い、覚醒水準の上昇に伴うCNV振幅の仮説的な逆U字関係を外因性刺激と内因性刺激の両者から検証した。すなわち、ある覚醒水準においてCNV振幅のピーク値を確認できれば、そのときの覚醒水準を最適な状態として評価できることが想定された。 昨年度は、外因性の光刺激に対してCNV振幅の逆U字型の反応特性を評価することができた。本年度は、内因性による覚醒水準の変動を検証した。 内因性刺激としてCNVの200回試行による単純反応時間課題タスクを用いた。CNVの頭皮上の測定部位、S1,S2刺激、刺激間間隔、及び試行間間隔は昨年度の実験と同様であった。背景脳波は、CNV各試行毎のS1前のデータを対象に周波数分析し、α波とβ波の平均パワー値を求め、α波率を算出した。被験者は7名で、実験は室温25℃(RH:50%)に制御された人工気候室にて実施された。 CNVの200回試行そのものを長時間の連続課題と想定した本実験では、α波率及ぴSPLの変化より課題開始時では覚醒水準が高く、その後次第に減少する様子がみられた。この間のCNV振幅は、課題前半で低く、中盤で最も高くなり、後半で再び低い水準となって逆U字型の反応を認めることができた。したがって、昨年度の光刺激を用いた外因性によるCNV振幅の逆U字反応と同様に、作業前半の高い覚醒水準は余分に高い覚醒水準であることが示唆され、CNV振幅がピークを示すときの覚醒水準が最適な状態となる可能性が示された。
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