研究概要 |
前年度において,一液性熱硬化型のエポキシ樹脂を熱により作動するカプセル内に封入して,貼付補修用アクチュエータとする手法を提案し,接着剤の軟化,放出,硬化を行うアクチュエータとしての動作確認を行い,予めコンクリート中に埋め込んでおいた接着カプセル封入アクチュエータを熱により作動させ,コンクリート表面に張り付けたCFRPのはく離の補修を行い,補修後の3点曲げ試験により補修が十分行われたことが確認できた. 本年度は,一方向GFRP積層材に発生する損傷現象に着目し,自己補修するインテリジェント化を行った.初期損傷形態であるマトリックスき裂,層間はく離を補修するために,マトリックス樹脂中に加熱により溶融,浸透し接着する補修用アクチュエータを配合した複合材料を成形することに成功した.この材料の性能を調査する目的で試験片を製作し,静的曲げ試験,疲労試験を行った.一度目の静的曲げ試験によって生じたマトリックスき裂と,これに起因する層間はく離は,加熱後行った二度目の曲げ試験の結果から加熱により補修されていることが確認された.また,引張疲労試験を行い疲労寿命,及び試験過程での剛性低下現象を調査した.アクチュエータを含まない通常のGFRP試験片と比較を行ったところ,複合材料で破壊とされる剛性低下値になるまでは両方とも類似した挙動を示したが,この時一度試験を中断し,加熱を行った後再試験を行うと,一時的に剛性は回復し,その後の寿命は通常のGFRP試験片よりも長くなった.以上の結果から,インテリジェント化により自己補修を行うことで通常のGFRPの性能を上回る新しい複合材料となることがわかった.
|