研究概要 |
風応力作用下で発生する吹送流の可視化実験と流速計測実験を行うことにより、吹送流中に形成される二次循環流の特性が明らかとなった。その成果を以下に示す。 1, 循環流の個数は水深に強く依存し、循環流の水平スケールに対する鉛直スケールの比は0.8であった。本研究では1〜3対の循環流が確認された。 2, 1対の二次循環流が形成される場合、鉛直方向の平均流速wの分布から、水槽中央部では上昇流、側壁付近では下降流が見られる。 3, 1対の二次循環流が形成される場合、水深が大きくなると無次元化された循環流の中心位置は鉛直上方に移動する傾向が見られる。 4,水平方向および鉛直方向の流速の変動成分のr.m.s値√<u^2>および√<W^2>を、波の振幅aと角振動数σで無次元化した<√<u^2>/(aσ)>と<√<W^2>/(aσ)>の鉛直分布において、水面に作用する風応力が弱い場合には、水表面近傍の変動流速分布は、微小振動幅波による理論値に良く一致する。風応力が強くなると、波動成分と乱れの成分が強い負の相関を持つと言う興味深い現象が見られた。地球の温暖化がこのまま進み、海面の上昇が、予測される最悪のペースで上昇したとすると、21世紀末には日本国内の砂浜の約9割が消滅する可能性が指摘されている。海面上昇の影響は、自然の侵食作用に追い打ちをかけると考えられている。また、地球の温暖化によって、台風の巨大化も予測されている。それ故、風応力作用下で生ずる吹送流中の二次流れが沿岸海域における浮遊砂の輸送過程にどの様な役割を果たすのか、また、吹送流によるせん断乱流や砕波による乱れが底質をどのように浮遊し、拡散させるのか等について、今後さらに移動床実験を行うことにより検討していきたい。その上で、岸・沖漂砂量を定量化するとともに、流れの数値シミュレーションを行うことにより、実海浜の変形の季節変化メカニズムを明らかにしたい。
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