研究概要 |
高融点遷移金属(Ti,Zr,Hf,Nb,Ta)アルコキシド有機溶液を凝固液,セルロース誘導体有機溶液を紡糸液として,前者を圧縮ガスを用いてノズルを通して後者へ押し出すことにより,均一複合ゲル繊維を作成した.ゲル形成はIR,XPS,NMR等によりMOC形成によると思われるIR吸収の発現,NMRの緩和時間の変化,O1sのピーク分離等からセルロースのOH基やCO基の金属への配位によると推定された.これらゲル繊維を延伸,乾燥後,アルゴン,窒素,アンモニアガス中等で各々熱処理(500〜1400℃)した.前二者のガス中で処理したものはXRDから面心立方型(食塩型)の特性を示すとともに,XPSからもTiC,ZrC,HfC,NbC,TaCの炭化物繊維が形成している.アンモニアガス処理ではNbN,TaN,TiNの窒化物繊維が得られた.しかし熱処理後の繊維表面のXPSの結果からは酸素のピークも認められ,格子定数を計算した結果,文献値と多少異なっていた.元素分析の結果から熱処理後の繊維は多量のアモルファス炭素を含んでおり,処理温度上昇とともにその量は減少した.EPMAから繊維の表面には金属,内部に炭素が多く分布していた.これらのことから化学量論的な炭化物や窒化物になっておらず,酸化物等と固溶体を形成しているものと思われる.これらの生成温度は熱力学的計算温度より数100℃低く,ゲル繊維前駆体が比較的均一な複合ゲルであることを示す.NbN,NbC繊維は抵抗の温度依存性はn型半導体的特性を示し,Tcは低いものの超伝導特性を示した.特性向上には延伸紡糸,延伸焼結等のさらなる検討が必要である.
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