研究概要 |
本研究では、鋼中のCuに起因した表面割れについての基礎的情報を得るため、Fe-Cu-X(X=V,Cr,Mn,Co,Ni,Al,Si,Sn)三元系における固液平衡を実験的に測定し、得られた結果に対して熱力学的観点から考察を行った。それにより以下の様なことが明らかとなった。 1.本研究で対象とした8元素のうち、V,Cr,Mn,Si,SnはFe中のCuの固溶度を減少させ、その傾向は、Snにおいて著しい。一方、Co,Ni,AlはCuの固溶度を増加させることがわかった。したがって表面割れの改善には、Co,Ni,Alの添加が有効と考えられる。 2.実験により得られた固液平衡の測定値をもとに、熱力学的解析を行った。CALPHAD法により、各2元系と3元系の熱力学パラメーターを評価しFe-Cu-X三元系状態図を作成した。これにより約1000〜1600°Cの温度範囲における固相と液相に関する相平衡を精度良く推定する事が可能となった。 3.合金元素の添加によるFe中のCuの固溶度変化△Cuを計算するための近似式を熱力学的に導出した。これを用いて、本研究で対象とした8元素以外の元素についてもCuの固溶度変化△Cuを推定した。その結果、△Cuは周期律に沿って系統的に変化し、Co,Ni,PdなどのVIII族元素の添加が最も効果的に△Cuを増加させることがわかった。
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