研究概要 |
本研究は,単独の生体酵素を電極触媒に用いることにより,有意義な反応を電気化学的な手法によって高選択的に進行させることを目的としており,そのためには,酵素と電極間の電子交換を司る,電子メディエーションシステムの新規な設計を行うことが大きな研究課題となる。本年度の研究では,アルコール脱水素酵素(ADH)を主に用いて反応システムの構築を試みたところ,当初の目的を全て達成出来たわけでは無いが,以下に示すような大きなブレークスルーがあった。 1)アセトフェノンを電子メディエーターに用いると,ADHによるNADP^+のNADPHへの電解還元反応が連続的に行えることを見出し,かつその電解液にケトンやアルデヒドを溶解させると,ADHがNADP^+の還元と反応基質の還元の両方の電極触媒として働くことによって,反応基質の電解還元反応が高選択的に進行することを明らかにした。 2)1)で構築した電解反応システムを用いて,非対称のケトンの電解還元反応を行ったところ,光学活性なアルコールが生成し,ADHの反応選択性を充分に利用することのできる不斉電解反応が行えることを見出した。そして,種々のケトンの電解還元反応を行うことにより,この反応システムに適した反応基質の選択方法を明らかにした。そしてその方法に従って反応基質を選択することによって,ケトンの不斉電解還元反応を100%の不斉収率によって進行させることに成功した。
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