研究概要 |
1.Pd(OAc)_2/Cu(OAc)_2/K_2S_2O_8/CF_3COOH系あるいはCu(OAc)_2/K_2S_2O_8/CF_3COOH系でメタン(40atm)とCO(20atm)を80°Cで20時間反応させると,酢酸がメタン基準でそれぞれ0.5%,1%の収率で生成することは既に明らかにしていた。そこで,収率の高いCu系に着目してさらに検討した結果,溶媒として用いたCF_3COOHが分解してCO_2とCF_3H(酢酸の約5倍量)を発生していること,また酸化剤のK_2S_2O_8は反応後にKHSO_4になっていることを粉末X線解析により明らかにした。このように溶媒が反応により分解することが明らかになったので,工業化する場合に適当でないと考え,次に新しい触媒系の探索を行った。その結果,前記速移金属のバナジウム触媒を用いると高収率でメタンとCOあるいはCO_2から酢酸が得られるという新しい興味ある成果を得ることができた。 2.すなわち,メタン(5atm)とCO(5atm)をVO(acac)_2/K_2S_2O_8/CF_3COOH系触媒を用いて80°Cで20時間反応させると酢酸がメタン基準で85%の高収率で得られた。また,この場合の触媒のタンオーバー数(TON)は1bであった。さらに,同様の系でCOの代りにCO_2(5atm)を反応させると,酢酸が89%収率(TON=15)で得られた。メタンとCOやCO_2の反応で酢酸がこのような高収率で得られたのは世界最初であり,新聞(朝日新聞夕刊,平成8年12月16日)にも報道された。現在,さらに工業化を目指して溶媒効果や反応機構について鋭意検討中である。
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