研究概要 |
遷移金属錯体触媒を用いる不斉合成反応において、光学活性三級ジホスフィンがすぐれた効果をあげることが明らかにされて来た。本研究では、リン原子にも不斉を導入することによって不斉効果を向上させることを目指し、リン不斉型光学活性ジホスフィニトを合成し、金属錯体触媒に配位させ、不斉合成に応用することを目的とした。 フェニルジクロロホスフィンに(-)ーメントール、水素化アルミニウムリチウム、テトラヒドロフラン・ボランを逐次反応させて、R,S-(-)ーメンチル(フェニルホスフィニト)ボラン(R,S-1)を得た。これを再結晶法によって分割し、R-1,S-1を得た。S-1を水素化ナトリウムで処理した後、o-キシリレンジクロリドと反応させ、(S)ーメンチル(2-クロロメチルフェニルメチル)フェニルホスフィニト・ボラン(S-2)と(S,S)-ジメンチル[o-キシリレンビス(フェニルホスフィニト)]・ジボラン(3)を収率それぞれ36%,24%で得た。3のうち、10%のホスフィニトはリン原子上で反転していた。同様に、m-キシリレンジクロリドとの反応を行い、モノ置換体(4)およびジ置換体(5)を収率それぞれ13%,20%で得た。 S-1を水素化ナトリウムで処理した後、1,4-ビス(p-トルエンスルホニルオキシ)ブタンと反応させ、淡黄色オイルを得た。これをクロマトグラフィーで分離し、(S,S)-ジメンチル[テトラメチレンビス(フェニルホスフィニト)]・ジボラン(6)および(S)ーメンチル[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)ブチル]フェニルホスフィニト・ボラン(7)を収率それぞれ33%,43%で得た。6のうちには7が若干量混入していた。 リン不斉型光学活性ジホスフィニトの合成のための有力な基礎データが得られた。
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