1.光学活性色素・光学活性前駆体色素の合成 フェニルトリルスルホキシドおよびそのピレン誘導体を合成し、光学物性の評価を行った。これらの色素は、紫外に吸収をもち、モル楕円率はあまり高くないが、光励起により不斉反転することが分かった。光不斉反転反応の量子収率は0.02程度で、溶媒の極性などには影響をうけないことが分かった。 2.光異性化反応に伴う不斉誘起反応の解析 合成した不斉反転型色素の溶液中および高分子固相中での光不正反転反応挙動を調べた。反応の量子収率は高分子固相中でも溶液中とあまり変わらず、この色素の不斉反転に要する自由体積はきわめて小さいことが分かった。しかし、光反応後期では、一次反からのずれが見られ、自由体積分布を反映していることが分かった。さらに、そのダイナミクスの温度化を室温から液体窒素温度までの範囲で測定したところ、80Kでは、反応速度は低下することが分かった。これは、動的自由体積の影響をうけるためと考えられる。これらの知見から、この色素はこれまでにないミクロ環境を反映するプローブ素であることが分かったが、さらに、不斉ポリマーなどを用いれば、不斉反応場の環境プローブとしての応用が期待される。
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