研究概要 |
本研究では新しい試みとして,岩石やセラミックといった脆性材料の高速破壊に注目し,クラックの発生から破壊に至る過程を,粒子法を応用して直接シミュレーションを試みた. 秒速数百メートルから数キロメートルの高速衝突現象は,材料は破壊を伴いつつ慣性に支配される.このとき重要なのは運動方程式と材料の破壊モデルである.衝突を受けた材料は,等方的な材料であれば静水圧の作用下では破壊せず,また残留変形も受けないが,偏差応力が静水圧に加わるとき,破壊形式に著しい影響が現れる. そこでこのような現象を多次元空間でモデル化する為,SPH法と粒子連結法(研究代表者の発案)という2つの粒子法を組あわせて計算を行った.クラックの発生は,偏差応力と静水圧の影響を受けるため,SPH法を用いて静水圧成分を計算し,粒子連結法を用いて偏差応力成分を計算した.そして微小要素間の結合部に作用する全応力(静水圧十偏差応力)を用いて破壊・非破壊を判断した. 昨年度は,かこう岩に鉄の弾丸が毎秒数百メートルの速度で衝突するケースについて計算し,実験結果とクレーター形状の良い一致がみられたが,今年度は薄い岩石板への衝突問題を通して,理論クラック線と計算によって得られたクラック線が一致することが示された. 本研究の成果は平成9年7月の「破壊力学のシンポジウム」ですでに公表され,併せて日本材料学会誌「材料」平成10年8月号・破壊力学特集の論文として掲載される予定である.
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