研究課題/領域番号 |
08876009
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
植物保護
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柘植 尚志 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30192644)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 植物病原糸状菌 / Alternaria alternata / Magnaporthe grisea / メラニン生合成遺伝子 |
研究概要 |
多くの糸状菌が同一のメラニン生合成系を有するにもかかわらず、その生産時期、蓄積組織、機能などは菌によって多様である。イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)とナシ黒斑病菌(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)は、どちらも栄養生長菌糸にメラニンを蓄積するが、黒斑病菌がメラニン化した黒色胞子を形成するのに対して、いもち病菌胞子は無色である。一方、黒斑病菌の付着器(角皮侵入時に形成される器官)が無色であるのに対して、いもち病菌付着器は黒色であり、このメラニン化が角皮侵入に不可欠である。本研究では、両菌におけるメラニンの機能分化とその分子機構に関する以下の研究を行った。 1.黒斑病菌におけるメラニンの生物学的ならびに病理学的機能 形質転換系を利用した遺伝子破壊法によって、黒斑病菌の3種のメラニン生合成遺伝子(ALM、BRM1およびBRM2)それぞれの変異株を作出し、それらの性質を親株と比較した。その結果、メラニンが病原性には直接関与しないこと、コロニー生育速度には差がないものの、メラニン欠損によって菌体重さらに胞子形成能が著しく低下することが明らかとなった。以上の結果は、本菌の自然界での生存・定着にメラニンが重要であることを示した。 2.黒斑病菌のメラニン生合成遺伝子のいもち病菌における発現 いもち病菌のメラニン欠損(病原性欠損)変異株を分離し、それらに黒斑病菌遺伝子を導入した。その結果、黒斑病菌のALMとBRM2遺伝子を導入することによって、いもち病菌のアルビノ(Alb)株とブラウン(Buf)株のメラニン生産性がそれぞれ回復することを見いだした。さらに、メラニン回復株では、栄養生長菌糸だけでなく付着器のメラニン化が観察され、病原性も回復することが明らかとなった。以上の結果は、本来付着器がメラニン化しない黒斑病菌の遺伝子がいもち病菌中では付着器形成時に機能することを示した。
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